こんにちは、ロサンゼルス在住の気象予報士・太田絢子です。
私は2026年の夏に、アメリカで第二子を出産しました。
海外での妊娠・出産は不安だらけでしたので、今後どなたかの参考になればと思い、妊娠・出産の記録をまとめます。
今回は出産編の第1回、「アメリカで予定帝王切開を決心するまで」のお話です。
第二子妊娠。嬉しさと同時によみがえった帝王切開の痛み
第二子の妊娠がわかったとき、もちろんとても嬉しかったです。
でも、それとほぼ同時に頭をよぎったのが、
「また帝王切開か……」
ということでした。
第一子を緊急帝王切開で出産している私。
手術そのものへの怖さもありますが、それ以上に強く記憶に残っていたのが術後の痛みでした。
もちろん時間が経てば痛みは引きますし、今となっては「そんなこともあったな」と思えるのですが、妊娠がわかった途端、あの痛みの記憶が急にリアルによみがえってきたのです。
妊娠できた嬉しさの一方で、不安が急激に募っていきました。
「経腟分娩に挑戦してもいいよ」
そこで、産科の初診のときに、
「一度帝王切開をしていても、今回は経腟分娩に挑戦することはできるのか」を先生に相談してみようと思っていました。
ところが、私から切り出すより先に、先生の方からこう言われたのです。
「希望するなら、今回は経腟分娩に挑戦することもできるよ」と。
一度帝王切開をしたら、次も帝王切開。
長女を出産するときもそのように日本の産院で説明を受けましたし、日本ではそれが一般的だと思っていた私にとっては、少し意外な提案でした。
帝王切開を経験した人が、その後の出産で経腟分娩を試みることをTOLAC(Trial of Labor After Cesarean)、その結果として経腟分娩で出産することをVBAC(Vaginal Birth After Cesarean)といいます。
ただ、TOLACには子宮破裂のリスクが伴い、最悪の場合は母子ともに命にかかわる危険性があります。
そのため日本国内では、希望しても実施できる産院が限られているのが現状です。
私が出産したアメリカの病院は、TOLACを選択する人の割合がほかの病院よりも比較的多いようで、先生も「特別なこと」というよりは、ごく自然に選択肢の一つとして提示してくれました(もちろんリスクの説明をしっかり受けた上で、です)。
「挑戦してもいいんだ」
そう思うと、私の中でもTOLACを前向きに考えてみたい気持ちが少しずつ大きくなっていきました。
何より、無事に経腟分娩ができれば、あの術後の痛みを経験しなくて済むかもしれない。
長女のお世話もあるし、身体の回復が早いに越したことはないはず――それは当時の私にとって、とても魅力的な選択肢でした。
TOLACできる? 日本で受けた帝王切開の手術記録が必要に
ただ、TOLACを検討するにあたり、どうしても確認しなければならないことがありました。
「前回の帝王切開で、子宮をどのように切開したか」です。
帝王切開というと、皮膚の傷をイメージしますが、皮膚の切開と子宮の切開は別の話です。
私の場合、TOLACを検討するためには、前回の切開が「子宮下節横切開(子宮を横に切る方法)」であったことを証明する必要がありました。
ちなみに私はお腹の皮膚を縦に切っているのですが、アメリカでは皮膚も横切開が一般的なようです。
妊娠中、主治医をはじめ複数のスタッフから「日本では縦に切るのが普通なの?」と珍しがられました。
第一子を出産したのは日本だったため、アメリカの先生から「日本の産院から手術記録を取り寄せてほしい」と依頼を受けました。
ちょうど妊娠中に日本へ一時帰国する予定があったため、長女を出産した産院へ連絡してみることに。
「現在アメリカ在住で、第二子の出産にあたりTOLACを検討しているため、前回の帝王切開の手術記録をいただきたい」
と電話で事情を説明すると、産院は快諾してくれました。
診察時間が終了するころ来院するよう言われ、懐かしい産院に出向きました。
そこで先生から説明があったのは、
「うちでは通常、皮膚は縦切開、子宮は横切開で行います。手術記録にわざわざ『子宮は横切開』という特記はありませんが、子宮を縦に切るのは極めて特殊なケースで、その場合は必ず記録に残します。つまり、記載がないということは間違いなく子宮は横切開です」
ということでした。
今さらお腹を開けて確認するわけにもいかないため、「明確な文言がない書類をアメリカの医師が受け入れてくれるだろうか」と少し不安でしたが、日本の先生がわかりやすいイラストも添えてくださいました。
また、書類を受け取る際にも、日本の先生から改めてTOLACのリスクについて丁寧な説明を受けました。
その後、受け取った手術記録を英訳してアメリカの医師に提出したところ、無事に納得してもらえました。
こうして、TOLACは「できたらいいな」という漠然としたものから、現実的に選べる選択肢へと変わっていきました。
夫はTOLACに反対
しかし、ここで大きな壁にぶつかりました。
夫の同意が得られなかったのです。
「挑戦できるならやってみたい」と思う私に対し、夫は子宮破裂などのリスクを強く心配していました。
もちろん、出産するのは私自身ですし、「自分の身体のことなのだから、自分が納得する道を選びたい」という思いもありました。
けれど、「もしものことがあったら……」と心配する気持ちも痛いほどわかります。
帝王切開の術後の痛みは怖い。
できれば避けたい。
でも、その恐怖を避けるためにリスクを冒すことが、本当に自分たちにとって一番いい選択なのか、なかなか答えを出せずにいました。
経腟分娩と予定帝王切開、どちらがいい?
その後の妊婦健診でも、毎回のように話題に上がりました。
ひとりで受診した際には、先生から「旦那さんは納得してくれた?」と声をかけられることも。
夫の意見で揺れている私を見て、先生はこう言ってくれました。
「あなたがどうしたいかが、一番大事なんだよ」
夫の意見を重視して迷い続ける私の姿は、文化の違いもあってか、先生には少し不思議に見えたのかもしれません。
経腟分娩、予定帝王切開、そして陣痛を経験したあとに緊急帝王切開になる場合。
そのとき先生が説明してくれた身体の負担へのイメージが、
経腟分娩 < 予定帝王切開 <<<<<< 緊急帝王切開
でした。
つまり、TOLACに成功して経腟分娩ができればいい。
でも、TOLACを試みた結果、途中で緊急帝王切開になった場合は、身体への負担が大きくなる。
TOLACに挑戦したいなら、それも一つの選択。
予定帝王切開を選ぶのも一つの選択。
どちらかを強く勧められることはありませんでした。
そしてもう一つ、先生の言葉でハッとしたことがありました。
「これ以上子どもを作る予定がないのであれば、予定帝王切開も悪い選択ではないよ」
振り返ると、これこそが私が最も悩んでいた根本の理由だったのだと思います。
帝王切開に「生涯で〇回まで」という絶対的な医学的制限があるわけではありません。
ですが、私自身は「3回帝王切開をする」という選択肢を現実的には考えていませんでした。
「今回TOLACが成功すれば、いつかもう一人欲しくなったときに『3人目』の可能性を残せる」
「でも、ここで2回目の帝王切開を選んだら、私のお産はこれで最後になるかもしれない」
決して具体的に3人目を計画していたわけではありません。
それでも、「自分の出産がこれで最後になる」と自分で決めてしまうことが、怖かったのだと思います。
最終的に、2回目の予定帝王切開を選びました
最後まで本当に迷いました。
「経腟分娩だったら産後はどんな感じなんだろう」と興味もありましたし、何より、あの帝王切開後の痛みをもう一度経験するのが怖かったからです。
でも、夫の不安もあり、先生の話も聞き、今後さらに子どもを持つ予定があまり現実的ではないことなども含めて考えた結果、
妊娠8か月(29週)の健診で、「今回は予定帝王切開で産みます」と先生に伝えました。
TOLACと予定帝王切開。
どちらを選ぶのが正解だったのかは、今でもわかりません。
実際の出産中、予想以上の痛さと恐怖に襲われ、「やっぱりTOLACにしておけばよかった!」と心の中で夫を恨んだ瞬間もありました(笑)。
それでも無事に出産を終え、2人の娘に囲まれて過ごしている今、この時間はほかの何にも代えられない、かけがえのないものだと感じています。
たくさん迷いましたが、こうして私のアメリカでの出産は、2回目の帝王切開で迎えることになりました。
次回は、手術前日の準備から、帝王切開で赤ちゃんが生まれるまでを詳しく記録していきます!


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